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  2. 「高き志」をめざし、世界各国で活躍する文理生からのメッセージ集
 日本人の著者としては異例ですが『評伝バラク・オバマ「越境」する大統領』(集英社)という伝記を09年に長期の現地取材で書きました。オバマ夫妻はシカゴ大学に勤務していましたが、私も90年代末にシカゴ大学で学んだ後、地元のシャコウスキー下院議員の事務所に勤め、また当時大統領夫人であったヒラリー・クリントンさんが上院議員選挙に出馬したときに、その事務所で働きました。彼女もシカゴ育ちです。ヒラリーさんは、米国史上初の女性大統領を目指した優秀な方で、オバマ政権では国務長官です。
 オバマさんは初のアフリカ系大統領ですが、実は初の太平洋出身の大統領でもあります。そこで副題をAn American President with Asian-Pacific Rootsとしました。09年11月にオバマさんは来日演説で「Pacific President(太平洋大統領)」と名乗りましたが、オバマさんの太平洋ルーツは米国ではあまり語られておらず、基本的には今でもそれは変わりません。それを伝えるのは、米国の外からやってきた日本人として、現地でオバマ大統領誕生を見届けた自分の役目であると自覚し、大統領の誕生の歴史を取材して広く伝えることで、大統領にもまた米国の多様性にも親近感を抱いてもらえるのではないかと思いました。そこでオバマさんの親友・恩師の方々を訪ね歩き、インタビューしました。全米はもとよりオバマ大統領が生まれ育ったハワイ、インドネシアにも足を運びました。
 そこでオバマさんの親友・恩師の方々をオバマ大統領が生まれ育ったハワイ、インドネシアをはじめ、全米に訪ね歩きインタビューしました。取材で分かった興味深い点は多々ありますが、第一に6歳から数年過ごしたインドネシアの現地校生活が、異文化理解の底力になっている点です。「帰国子女」の大統領は、人類学者だった母親の国際的感覚をしっかり受け継いでいます。
 第二に、ハワイという人種や文化が混ざり合う州で多感な青年期を過ごした意味です。恩師の先生をはじめ親友の少なからずは日系人でした。人種が混ざり合った人のことをハワイ語で「ハパ」といいますが、オバマさんも文化的に「ハパ」です。第三に、大学時代は詩や小説の創作に没頭した文学青年だったことです。『評伝』では詩を和訳して紹介しましたが、文才は演説にも反映しています。芸術家が政治家になった希有な例です。
 オバマ大統領は「アジア太平洋経済協力」でまもなく来日します。こうした個性的な大統領を選挙で選んだ米国の民主主義と将来の日米交流について考えるきっかけにしてみて下さい。
※2011年 BUNRI JOURNAL No.84号掲載原稿。

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